Vol.9 「臓器と未病」−2)肝臓と未病
1.肝臓の働き
今回は、肝臓と未病についてお話しします。
肝臓は人体で最も大きな臓器です。肝臓の位置は右脇腹から心窩部(みぞおち)にかけて存在し、前方から見ると直角三角形の形をしています。
・大きな役割として、肝臓は消化を促します。
肝臓から胆管を通って胆汁が分泌されます。この胆汁は胆嚢(たんのう)へ行って濃いものになります。通常の食べ物であれば、肝臓からの胆汁で消化できますが、脂質の多い食べ物の場合は、この濃い胆汁が必要になります。
・次に、肝臓は体に必要な栄養をつくります。
食べた物は、腸で栄養が吸収されます。その栄養は門脈を通って肝臓に運ばれます。そこで体に必要な栄養が作られます。
・最後に、肝臓は体に必要なエネルギーを作ります。
人間には大きなエネルギータンクと小さなエネルギータンクがあります。その大きいものが肝臓です。肝臓がエネルギーを作るためには酸素が必要です。その酸素なくして運動などの巨大なエネルギーを作ることはできません。
つまり、肝臓が悪くなる予兆は、消化や栄養状態、エネルギー(活発に動けるか)などに表れますので、主に疲れやすくなったと感じる注意が必要な時だと考えられます。
2.肝臓と未病
では、肝臓の未病とはどのような状態なのでしょう。この未病状態を押さえておくことで、未病治療のタイミングがわかります。
まず「未病1」(一般検査は正常だが症状はある)におけるチェック項目が以下になります。
- 疲れやすい
- だるくなる
- 肝臓の部分が重苦しい(補足:肝臓は痛みとしての症状はほとんどありません。痛みが出るのは肝臓ガンなどの末期状態の時などです)
- 踏ん張りがきかなくなる
- 手のひらが赤くなる、ポツポツと斑点状になる(補足:この症状は血管が浮き出てくる為に起こります。胆汁の通りが悪くなると、ホルモンが出にくくなり、体内にあまったものが血管に流れ出ます。その結果、血管が広がった状態になるのです)
- 首筋や顔に細い血管が浮き出てくる
- 目の白い部分が黄色になる
- 出血しやすくなったり、血が止まりにくくなったりする(補足:歯を磨いたりするときなどに見られます。これは肝臓内で作られる出血を止める成分が生成されにくくなる為です)
次に「未病2」(一般検査は異常だが、症状はない)のチェック項目をあげてみます。
- 血液検査で肝機能の数値がほんの少し異常を示した状態
- 過去にC型肝炎になったことがある
- 尿が黄褐色のとき
- 肝臓が大きくなったとき
- コレステロール値が異常に低いとき(補足:100mg/dLになったら要注意です)
- コレステロール値が異常に高いとき
- ウロビリノーゲンに反応が出たとき
このように未病1、未病2の状態は、患者様自身でも気づくことができます。基礎的な知識とふだんからのチェックにより、だれでも未病状態を知ることができます。
未病状態を知り、未病の段階で未病検査、未病治療治療を行う。このことによって、健康を取り戻す可能性が高まります。障害を残さずに健康状態を取り戻すためにも、未病の概念を広く知っていただきたいと思います。
血管活性化医療 Jinken clinic 院長 金澤武道
腎研クリニック 院長 金澤 武道 著書