Vol.12「臓器と未病」−5)肺臓(はいぞう)と未病
1.肺臓の働き
肺の主な働きは、大きく下記の3つがあります。
1)換気機能:呼吸をすることによって空気の入れ換えを行います。
2)拡散機能:体内の酸素や二酸化炭素を巡らせます。
3)循環機能:肺を通して血液を心臓へ送ります。
肺活量というのは、息を吸い込んだ後に肺から吐き出せる空気の量のことを言います。
1回の呼吸量は約500mlです。吸うときは約2000ml、吐くときは約1000mlで、人は合計約3500mlの肺活量があると言われます。この内容量を計ることで病態がわかります。
肺には肺胞マクロファージ(マクロファージ:白血球に分類される免疫細胞のひとつ)が存在し、肺の健康を保っています。マクロファージは、生体内に侵入した細菌やウイルスなど異物を貪食(どんしょく:体内の細胞が不必要なものを取り込み、消化し、分解する作用)して、肺胞の健康を保つ役割を果たしています。正常なマクロファージの姿を基準にして、変化している状態を見ることで未病状態を予想することができます。
以下に、正常、ヘビースモーカー、肺がんのそれぞれのマクロファージを示します。病態による姿の違いがわかります。
2.肺臓と未病
【未病1型】一般検査は正常だが、症状はある状態
1)咳嗽(がいそう:肺や気道から空気を強制的に排出させるための生体防御運動であり、通常繰り返して起こる気管・喉頭・呼吸筋の反射的な収縮運動)
軽い咳(せき)はそのまま経過観察とすることが多いが、肺癌の初期であったり、喘息の前兆であったりもします。
2)喀痰(かくたん:呼吸器系の粘膜からの分泌物。一般的に痰と言われる)
喀痰(かくたん)はよく見られるだけに、熱がなければ経過観察とすることもあります。反面、慢性気管支炎、肺線維症などが潜んでいることもあるので注意が必要です。
3)血痰(けったん:血が混じった痰のこと)
血痰があっても普通の胸部X線写真では何ともないと判断されることが多いですが、その原因をつきとめるまで詳細に検査を進める必要があります。
4)軽い呼吸困難
ほとんどの場合は経過観察にすることが多いのですが、肺線維症、肺血栓症、肺気腫、慢性気管支炎などが潜んでいることも多いです。
5)胸痛
心臓、肋間神経痛によることが多いのですが、胸膜炎、縦隔の胸膜に由来することも多いので注意が必要です。
6)チアノーゼ(血液中の酸素が不足することをきっかけとし、唇や指先などの皮膚や粘膜が青紫色に変化した状態)
酸素補給が十分ではない状態です。
7)嗄声(させい:声のかすれ)
喉頭部の方に病変が波及していることもあります。
8)浮腫(むくみ)
右心不全の初期であることもあります。
9)息切れ
呼吸が短く、話が途切れ途切れになる場合は注意が必要です。
【未病2型】一般検査は異常だが、症状はない状態
1)肺活量が小さい(一秒率が小さい)。
2)レントゲンの異常
3)CRPの異常
4)血中酸素濃度(SpO2)が低下。
未病の医学は、医師の態度が第一に問われます。今ある何気ない状態や一般検査の異常項目を疑うことで、本当の原因を突き止めることが望めます。
同様に、患者様自身の意識も大切です。「このくらい大丈夫」と勝手な判断をせず、何気ない症状や一般検査での異常が見られた場合は、一度、未病の診療を受けることをお勧めします。
未病状態をより高い確率で発見するためには、医師と患者様の協調の医療が必要になります。
血管活性化医療 Jinken clinic 院長 金澤武道
腎研クリニック 院長 金澤 武道 著書