Vol.10「臓器と未病」−3)膵臓(すいぞう)と未病
1.すい臓の働き
すい臓は胃の後ろ側、背骨の前にあります。右の肋骨の下あたりから、左の肋骨の奥の方に横に細長く、背中側に位置しています。
そのため、お腹の上からの触診ではわかりにくい臓器です。
すい臓は二つの大きな働きをもっています。
■ひとつは、消化液を作り、それを消化管内に分泌する働き。
■もうひとつは、 血液中の糖をコントロールするインスリンなどのホルモンを生産し血液中に放出する働きです。
まず、消化液の分泌についてです。
すい臓には食べ物の消化を助ける酵素を作る役割があります。これらの酵素はすい臓の管から十二指腸に流れ、消化を助けます。口から摂取された食べ物は、胃でおおざっぱに砕かれ、十二指腸に送られます。この時、胃の内容物は強い酸性です。そのままでは小腸から栄養分として吸収することができないので、より細かく分解し、酸性度を弱めることが必要です。その作業は、胃と小腸の移行部である十二指腸で行われます。すい臓なくして、食物の正常な消化はあり得ません。
次に「内分泌機能」と「外分泌機能」です。
すい臓には、インシュリンなどのホルモンを出す内分泌機能と、胃で消化された食物を更に細かく分解する消化酵素の働きである外分泌機能があります。血液の中の糖分は、グリコーゲンという物質に変わり、肝臓で蓄えられエネルギーとなります。内分泌機能によって、血液中の糖分をコントロールするホルモンを作り出し、血液中の糖分が高くなったり低くなったりしないように調節します。また、外分泌機能によって、タンパク質を分解するトリプシンなどの消化酵素を含むすい液が、消化管ホルモンと迷走神経の指令を受けて分泌されます。
2.すい臓と未病
では、すい臓の未病とはどんな状態なのでしょう。
まず、未病Ⅰ型(一般検査は正常だが、症状はある)のチェック項目です。
- 不消化便
- 下痢
- 背中に痛みがある
- 食べるとすぐに痛みがある
- 腹痛
- 吐き気
- 黄疸(おうだん)
- 尿が多くなる
- 食欲が増す
- 大食になる
- 食べても体重が増えない
次に、未病Ⅱ型(一般検査は異常だが、症状はない)のチェック項目をあげてみます。
- 血糖の上昇
- 中性脂肪が高くなる
- アミラーゼの上昇
- 血糖が異常に低下
- 尿糖が見られる
すい臓の病気は、臓器の特異性ゆえに医者でもわかりにくいものです。ただし、未病1、未病2の知識を持つことにより、症状に対して疑う目を持つことができます。
ふだんからの未病チェックにより、早期の気づきや発見が可能になります。未病の知識を持ち、未病治療へつなげる。このことによって、健康状態を取り戻す可能性が高まります。
障害を残さずに健康状態を取り戻すためにも、未病の概念を広く知っていただければと考えております。
血管活性化医療 Jinken clinic 院長 金澤武道
腎研クリニック 院長 金澤 武道 著書