Vol.11「臓器と未病」−4)胃・腸と未病
私たちは、食物からエネルギーや栄養を摂取して生きています。その消化・吸収・代謝・排泄をつかさどっているのが、口から肛門までの消化器官です。胃や腸と未病について述べてみます。
1.消化器官の働きについて
(1)胃の働き
胃はみぞおちのあたりにあります。一時的に食物をたくわえて、栄養として吸収しやすい状態(粥状)にします。胃は消化を助けます。胃酸で細菌の殺菌もします。
(2)小腸の働き
腸は胃に続く消化管です。末端は肛門で終わります。食物の消化、栄養素の吸収を行います。消化器系の中では最も長く、小腸と大腸に分けられています。小腸と大腸は構造も役割も異なります。
小腸には、内容物を混ぜ合わせる動き栄養素を吸収する働きそして、内容物を大腸へ送り出す動きがあります。小腸の表面はシワのようになっており表面積を増やし栄養を取り込みやすくなっています。
しかし胆汁や酵素が不足すると小腸の機能が十分に発揮されず、脂質が分解されにくくなったり、水分や栄養素を取り込むことができなくなったりして、血液がドロドロになりやすくなります。
また、宿便などがとれにくく、毒素による健康障害を招くこともあります。
(3)大腸の働き
大腸は盲腸、結腸、直腸に区分され、結腸が大部分です。これらを通って、水分を吸収し、内容物を固形化します。
また、小腸で吸収されなかったものの処理を行います。これを排泄といいます。便が固くなるのは、この動きが停滞し、長時間になり、水分が吸収され過ぎたために起こるので、便秘の原因でもあります。
(4)消化のしくみ
1)食べ物が胃の中でお粥状になり、小腸に運ばれます。
2)すい液、胆汁、腸液などによって、糖質はブドウ糖や果糖などの単糖類に、タンパク質はアミノ酸に、脂肪は脂肪酸とグリセリンに消化されます。そして、小腸の絨毛(じゅうもう)から吸収されます。
3)ブドウ糖やアミノ酸は血管に入り肝臓に運ばれます。
4)脂肪の大部分は肝臓に行きます。
5)肝臓で栄養またはエネルギー源となります。
6)胃や腸で消化・吸収されなかったものは大腸に送られます。そこで水分、ミネラルなどが吸収されます。
7)口に入ってから10~12時間後に直腸を通って、肛門から排泄されます。
2.胃・腸と未病
では、胃・腸の未病について述べてみます。まず、未病Ⅰ型(一般検査は正常だが症状はある)のチェック項目です。
【未病Ⅰ型】
①げっぷ
②胸やけ
③吐き気
④嚥下障害(口の中のものを上手く飲み込めなくなる状態)
⑤食欲不振
⑥舌が白い
⑦便秘
⑧下痢
⑨腹痛
⑩体重減少
⑪消化不良
⑫食欲不振
⑬腹部膨満感
次に、未病Ⅱ(一般検査は異常であるが、症状はない)のチェック項目をあげます。
【未病Ⅱ】
①ポリープ
②がんの初期
③便の潜血反応
④胃潰瘍(いかいよう)
胃・腸の病気は、初期状態ではほとんど痛みを伴いません。痛みを感じない分、病気の進行を見落としやすくなります。未病Ⅰ型、未病Ⅱ型のチェック項目を意識することで、普段の何気ない症状から未病状態を予測することができます。
未病医学は、医者だけの特権ではありません。患者さん自身の積極的な健康管理の医学なのです。高齢化社会は受け身では乗り切ることはできません。
まずは、患者さん自身が知識を身につけ、判断し、行動することが必要です。将来、障害を残すことなく健康状態を保っていくためにも、未病の概念を広げていきたいと考えております。
血管活性化医療 Jinken clinic 院長 金澤武道
腎研クリニック 院長 金澤 武道 著書