今回は、2009年に腎研クリニック院長 金澤 武道 の著書「脳梗塞は治る前に治せる!」の「はじめに」をお届けします。
病気の前に未病という状態を定義し、脳梗塞が発症していなくても既に病気であると自覚して治療に当たらなければならないと説いています。未病段階で治療を行わずせっかくの人生が台無しになってしまう。そんな辛い思いをする患者を一人でも減らしたい医師としての強い使命感から、脳梗塞になる前に治せるということを訴えた書籍です。
(以下、院長 金澤 武道著書「脳梗塞は治る前に治せる!」からの引用)
はじめに
枯れた花はどんなに心をかけても元には戻りません。
あの美しい姿も少しの油断から、取り返しのつかない姿に化してしまいます。
病気もそんな気がします。
脳梗塞になってしまうと、どんなによい大きな病院で治療しようとも、元の健康な体に戻すことができません。ほとんどの患者が片麻痺となり、言語障害を残して社会の一線から姿を消していきます。どんなに仕事をしたくてもできない。こんな悲しいことがあるでしょうか。
命が助かればよいというものではありません。その後に迫る悲劇が、助かった命を呪うかのように自らの尊厳性を破壊していきます。
脳梗塞とはそんな病気です。それほどに人間を震撼させる病気なのです。
私は長い間大学の研究室で研究し、一私立病院の10年を含めて40年にわたって患者を診てきました。大学に来る患者は寝たきりの人や動けない超高齢者は極めてまれで、一人で歩き、よくなると歩いて帰ることがほとんどです。しかし地方の一私立病院に勤務するようになってからは、診る患者の質が一変しました。大病院から脳卒中急性期の過ぎた片麻痺や言語障害を持った患者が搬送されてきます。あたかも脳卒中急性期から生命を保ち得たことに治療の最先端を施したんだと言わんばかりに。
しかし患者の、家族の苦悩はそこから始まるのです。あたかも生命を呪うかのように、排泄物の後始末ができない、嚥下(えんげ:食べ物を口の中で噛み、飲み込みやすい大きさに変えて口から喉、食道、胃へ飲み送り込むこと)ができないために胃にチュープを通したりと、人間の尊厳性を破壊しかねない人生が待ち構えているのです。
私はこの現状をみて、これでは医療の意義がない、生かすことが患者をさらに苦境に陥れる結果になってしまうことを認識し、なんとかしてこの現状を救わなければならないと考えました。
悲しいかな現代医学は、この病気を治療して後遺症を防ぐことは不可能に近い、なぜなら発症して短時間のうちに治療しないとほとんど後遺症を残してしまうからです。それは脳の血管と神経組織との関係をみると理解できます。
それでは、一体どうすれば脳梗塞の後遺症から患者を守ることができるだろうかと考え、私は漢方から脱した未病医療に挑戦しました。
脳梗塞の前ぶれである「脳梗塞未病」を新たな病態としてとらえ、この状態に対して治療するのです。即ち、病気から未病への発想の転換です。
そしてこの治療によって脳梗塞の発症を防ぎ、後遺症からも守れることを確信しました。ここでは脳梗塞未病への道のりとその成果について述べます。
花を枯れさせないためには、常に水分と栄養に注意し、管理しなければなりません。
美しい花を守る心が、美しい人間生活を守るための心へと変えられることを念願しなから、本書がお役に立っことを心から願っています。
金澤 武道
腎研クリニック 院長 金澤 武道 著書
角谷 研司