未病医学について
未病医学とは何かを改めて整理してみようと思います。
◯「病気になったら治療しよう」というのが「従来の医学」・・・医師主導型医療
◯「健康なうちに予防しよう」というのが「予防医学」・・・本人主導型予防
◯「未病を見つけて治療し、健康に戻す」というのが「未病医学」・・・患者・医師共存型医療
1.なぜ未病医学に取り組むのか?
例えば、脳卒中という病気があります。
脳の血管が詰まったり、破れたりすることによって起こる病気です。
脳卒中で半身不随になってしまってからでは、現在の医学では治すことはできません。
酷なようですが、脳卒中になった時はその人の最後だと思うようにしなけれはなりません。つらいリハビリ生活、寝たきりの生活など、多かれ少なかれ障害が残り、社会復帰が困難です。
ではとうすれはいいのか。
脳卒中になる前に治療し、手を打たなければならないのです。
そこで、未病医学が必要になります。
病院で診る多くの患者さん達が、半身不随、言語による会話が出来ない、用便の始末が出来ない、あるいは寝たきり状態になる。
そんな時に病気の怖さが分かり、後悔が出てきて、健康の有難さを知るようです。
仕事をしたくとも出来ない、家族と会っても顔も思い出せない。望むと望まないにかかわらず人間らしさが失われます。
これを救う為に未病医学が必要となります。
2.「従来の医学」と「未病医学」の違いは?
従来の医学では、「健康」と「病気」という分け方をして、「病気」の治療をしていました。この考えでは、病気になった人のみを治療することになります。つまり、患者が脳卒中になり、来院してはじめて治療をするということになります。
これに対して、未病医学では「健康」と「病気」の間に、「未病」という状態を考えます。未病状態のうちに治療するのです。
つまり、脳卒中の未態状態で治療し、健康な状態に戻すことになります。
3.未病状態とは?
未病には以下の3つの状態を考えます。
未病Ⅰ・・・症状はあるが、一般検査値が正常の場合。
未病Ⅱ・・・症状はないが、一般検査値が異常の場合。
未病Ⅲ・・・いろいろ精密検査をしても原因不明の場合。(これは将来の医学の進歩を待になければなりません。)
介入未病・未病に未病Ⅱの対象(健康人とも言えないし、病人とも言えない)から精密検否により原因を見出し、それを積極的に治療する。
4.「予防医学」との違いは?
「予防医学」と「未病医学」は全く異なる概念です。
「従来の医学」では、病気の状態で治療します。
「未病医学」では、未病の状態で治療します。
「予防医学」ては、健康の状態で治療するのです。
予防医学は、脳卒中を例にあげると、健康なうちに「脳卒中にならないように、あれこれ手立てを講じよう!」ということになります。
特にねらいを定めることなく、病気を防ぐ為に手立てを講じるという考え方です。
「末病医学」では、これに対して未病状態という治療対象が明確です。既に問題が起こっている部分にねらいを定めて治療し、高い確率で健康に戻ることが可能になります。
5.未病医学の実際
下の写真は、MRIによる脳の血管画像です。
この患者さんは、めまい、しびれなどの症状を訴えていましたが、多くの病睆で異常なしと診断されていました。
「従来の医学」では、健康と病気という概念しかありません。そこで、とりあえず日常生活を送ることができていれば、様子を見ましようということになります。
病気でない状態、つまり健康として位置づけてしまうのです。
当院では、来院時のこの状態を、未病Ⅰ(症状はあるが、一般検査は正常)としてとらえます。更に、精密検査を行ったところ、M R I(左図)によって、脳の血管がほとんと見えない状態であることがわかりました。
早速、未病治療を行ったところ、10日間(右図)で、脳の血管がはっきり見られるようになり、しかも、10日前のめまい、しびれが全くなくなりました。未病医学によって、もとの健康状態に戻ることができたのです。
「従来の医学」と「未病医学」とでは、医療行為は同方向であっても、全く理念を異にするものであって、治療結果が全く違ってきます。
腎研クリニック 院長 金澤 武道
腎研クリニック院長 金澤 武道 著書